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製品情報

Calman導入事例【レスパスビジョン株式会社 様】

 





 

 
レスパスビジョン株式会社(代表取締役 鈴木仁行/東京渋谷区)は2019年、スタジオモニターのカラーキャリブレーション用に Calman を導入した。同社は、1987年にコンサートビデオのオフライン編集スタジオとして誕生、現在ではCM、ミュージックビデオ、映画やドラマなど多岐にわたる分野の、撮影から編集まで行うポストプロダクション。
 
今回導入されたのは、ポートレイトディスプレイズ社(旧スペクトラカル社)のキャリブレーションソフトウェア「Calman Studio」、パターンソースジェネレータ「VideoForgePro」及びAJA HA5-4Kコンバータで、導入済のコニカミノルタ社のディスプレイカラーアナライザーCA-310 と組み合わせたシステムである。
 
ソニー ブラビアMASTER SeriesがCalmanオートメーション調整に対応した事に着目し、より高品位なクライアントモニター環境を整える為の導入となった。
 
レスパスビジョン株式会社 技術部 部長 長島 正弘氏に「Calman」採用の経緯や、現在のワークフローなどを伺った。


 


全室のモニター調整に約3年
 
(長島氏:)東北新社でエディターとしてキャリアをスタートし、オムニバスジャパンの立ち上げの後イメージスタジオ109へ。卓球をモチーフにハイスピードカメラで斬新な映像を作り上げたビールのCMなどの制作に携わった後、10年ほど前から株式会社レスパスビジョンに移籍し、同社躍進の原動力として活躍されている。


「わたしが来た当時は、各部屋でモニターの設定値がバラバラだったんですね。まずはそれを合わせることから始めました。20台のマスターモニター、30台に迫る台数のクライアント液晶モニターの画質を同じ見た目に揃えるのは並大抵の事ではありません。とくに、リファレンスとなっているマスターモニターの見え方に合わせることを目的にすると、さらに作業量は増えます。マスターモニターを基準に合わせるのは当然のことながら、民生TVは基準の値に合わせるようにし、且つ、民生ライクに調整しました」
 
当時、レスパスビジョンでは民生の液晶TVを東芝REGZAで銘柄を揃え、長島氏がその中から特性の良い一台を見つけて徹底的に調整。マスターモニターと民生TVそれぞれの“基準のモニター”を作り、そのモニターに合わせて他のモニターを合わせていったという。
 
「基準モニターに合わせる作業には感覚が大事で、必ず自分の目で合わせます。モニターには、ユニフォーミティという画面に対して部分部分にムラがあるので、測定しても画面センターと端でそれぞれ違っていて合いません。モニターの個体差もあるので、一台一台、目で見て揃えています。実際に全てのモニターを調整するのには3年ほど掛かりました」 
 
特に商品を取り扱うようなCM制作では、より厳密さが求められる。オフライン、グレーディング、オンライン、MAと部屋が移動していく中で、部屋ごとに商品の色が違うということがあってはならないのだ。
こうして全室のモニターを整えたことで、クライアントからの評価を得て、さらなるCM案件の受注につながったという。
 


日々変化していくモニターの維持管理
 
「モニターは経年劣化もあるので、一度調整しても徐々に状態は変わっていきます。それぞれのモニター画面のセンターの測定数値を記録しておき、色がズレてきた時は、記録しておいたモニターごとの測定値に合わせてから、目で見て調整するようにしています。ゼロから合わせるよりは断然早いので、そのようにして維持しています。キャリブレーションは数値で合わせるだけで良いという問題ではなく“色を作る・合わせる”という感覚を持つことが重要です。実際にできる人は少ないですね…」
 
 
液晶テレビの発展とともに抱えた課題
 
「液晶テレビの発展により民生TVは、各メーカーが独自のRGBガンマバランスを持ち、種々の味付けが施されています。
REGZAを長く使っていて、暗部の特性というか、暗部に色味が乗るのがどうしても納得がいかなかった。それがHDから4Kになっても、マーケットを見渡してみて、なかなか良いものが見つからなかったんです」
 
「バックライトがCCFL管からLEDになり、有機ELが発展しました。ただ、これらは分光特性・分光分布が特殊なので青い光が強く、特に初期の4K TVは青が強かった。さらに液晶ディスプレイにおいては、HDRモードが搭載されたことで光量を稼がなければならず、そのためか視野角が犠牲になり、又、黒が浮いてしまっていた」
 
そうした苦しい状況の中、2018年、ソニーから ブラビアMASTER Series が発表されたことで流れが変わったという。
「視野角も4K LEDバックライトの液晶TVとしては、すごくよかった。ガンマバランスもソニー独自のもので、他の物に比べて断然好印象でした。ただ、赤が強く出やすい ソニーの特徴は個性として残っており、ニュートラルな色を作るのに、あと一歩というところで足踏みが続きました」
 
通常使用に問題ないところまでは詰められているが、暗部の黒に赤が乗るという特性が本当に納得いくところまで抜けない…暗中模索の中、長島氏の元に朗報が届いた。 ソニー ブラビアMASTER Seriesが映像モニターのキャリブレーションで定評のあるCalmanに対応し、オートメーション(自動)で映像調整 ができるというのだ。
 
「ブラビアMASTER Series自体、メニューから10ポイントのガンマバランスの調整ができますが、それをマニュアルで行うのは至難であまりやりたいことではなかったのです。CalmanでTV内部のガンマカーブを外部の機器から調整することが可能になるということは、問題を解決できるかもしれないと考えました」



 


Calman Studio検証から導入へ
 
長島氏は早速Calmanの日本代理店であるEDIPITとコンタクトを取り、現場での検証をおこなった。
 
Calmanはソニー ブラビアMASTER Seriesとネットワーク(有線・WiFi)接続し、ルミナンス/20ポイントグレースケール/カラーガマットをオートメーションで調整を行うことができる。ブラビアは通常10ポイントグレースケールだが、Calmanと接続すると自動的に20ポイントグレースケールに増える。
 
「デフォルト設定で調整をしただけで、これまで苦労しても取り切れなかった赤みが取れ、スッキリとフラットな状態が得られました。デフォルトのRGBのガンマカーブが綺麗に揃う。それがCalmanの良い所で、それはすごく大きなこと。民生機なりの綺麗なガンマカーブに一回揃えてから、自分のアレンジをする。そのために有効だと思いました。Calmanに好感を覚えましたね」
 
「レポートがグラフィカルに出るので、デフォルト値がどんなカーブで、どのくらい出てるのか、というのと、校正結果もグラフになるのがいいですね」
 
最後に、長島氏はCalmanのレポート機能が「誰にでもわかりやすい」と評価した。
 
以上の検証結果から、レスパスビジョンではソニー ブラビア MASTER Seriesを短期間のうちに8式を導入するに至った。
 



■レスパスビジョン 導入システム構成
 


カラーキャリブレーションの重要性
 
長島氏の長いキャリアの中で、カラーキャリブレーションに対しての厳密さの比重は高い。しかしそれが、長島氏の負担になっているとも言えるだろう。その負担をCalmanが多少なりとも軽減させたことが、導入の決め手だった。
 
レスパスビジョンのスタジオでは、環境光を6500ケルビンとして調整しており、日常の視聴状況を正確にシミュレートしていた。統一された6500ケルビンの環境光でマスターモニターを使って色を確認するから意味があるのであって、白熱球等の3200ケルビンの赤い環境光で見たら、設定、調整したモニターも違う色に見えてしまう。
又、人間の目は色順応があるため、色調整がずれているモニターや環境光の色温度が違っていても暫く見ていると普通に見えてきてしまう。そういったところまで気を配ることが、本来のカラーキャリブレーションではないだろうか。
 
4K、8Kとモニター解像度の進化と視聴環境の整備によって色の再現性、精度の高さが求められる。今後、カラーキャリブレーションのニーズもますます高まっていく中、先行しているスタジオでも、一段の取り組みが促されることになるだろう。
 


Calman製品情報
Calman 2019 AutoCAL for ソニー ブラビア紹介ページ
ソニー ブラビア MASTER Series製品ページ

 
取材&レポート:(株)アルペディア 林 和哉