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UHDTV HDR,HLG & WCGを理解する by LightIllusion

UHDTV - HDR, HLG & WCG
HDR、LLG、WCGを備えたUHDTVディスプレイについて理解する

written by Steve Shaw from Light Illusion(CEO)

Steve Shawさんのプロフィール写真

HDR(ハイダイナミックレンジ)またはHLG(ハイブリッド・ログガンマ)とWCG(広色域)イメージを備えたUHDTVが、視聴体験を向上させる次世代のテレビとして勢いづいている。 けれども、HDR/HLG/WCGを使用したUHDTV全体のコンセプトはまだ非常に漠然としており、その基本でさえ理解するのが非常に難しい。
 

UHDTV

UHDTV(ウルトラ・ハイディフィニションTV)は、さまざまなディスプレイメーカーが個々に自身の「ウルトラHD」仕様を定義したため、その誕生は多少困難なものとなった。



そのためUHDアライアンスが、UHDTVとして認めるよう要求されたすべてのディスプレイ・パラメーターを取り入れて、明確な(現在のところ)ウルトラHD仕様を公表した。しかし、UHDTV仕様は部分的に分離して適用しても良いし、実際そうされている。

例えば、標準HD解像度もしくはSD解像度を持つ標準色域ディスプレイ(Rec709)がHDR/HLGコントラストで動作するのを妨げるものは何もない。
UHDアライアンスとその仕様について詳しくは: www.uhdalliance.org 参照。

ここでは特にHDR/HLGとWCGに焦点を当て、それらがディスプレイ・キャリブレーション、イメージ・ワークフロー、最終映像の視聴体験にどのような意味を持つかについて考える。
 

HDR & HLG

HDRとHLGによって、ディスプレイの明るさが単に増すだけでなく、ディスプレイの持つ輝度をより有効に使用して明るいハイライトでもきめ細かな映像を表現できる。 そのようなものとして、ピーク輝度レベルの異なるディスプレイならそのディスプレイごとに、またSMPTE ST2084(ドルビー・ビジョンやHDR10に適用する)やBBCの勧めるWHP-283ハイブリッド・ログガンマ(HLG)フォーマットのような異なるHDR規格ごとに、ガンマカーブを設定する必要がある。

注: HDR10やHLGが10ビットベースであるのに対し、ドルビー・ビジョンが12ビット映像であることには意味がない。 結果として、10ビットHDR/UHDTV素材が正しいドルビー・ビジョンとみなされることはない。
 

ST2084 HDR

ST2084はドルビー・ビジョンとHDR10 HDRフォーマットのためのEOTF(ガンマ)を規定している。

LightSpaceでは、ST2084 HDR EOTFをRec709、P3、Rec2020色域のプリセットとして用意している。

ST2084は最高輝度10,000nitsの能力を持つ仮想の「ゴールデン・リファレンス」ディスプレイに基づいており(「現実」のディスプレイはこの仮想ディスプレイに照合させている)、そのガンマカーブ(EOTF-電気光学伝達関数)を次に示す。 これは、高い輝度性能を使用しているのはほんの一部の映像DRであり、映像の大部分は非常に低い輝度であることを示している。 (これは相対ディスプレイ・ガンマであり、異なる映像ソースから異なるディスプレイへの変換ではない!)

ST2084 HDR規格は、「大きなルミナンスレンジを持つビデオ映像の制作を可能にすることを意図したEOTFを規定することを目標としており、全体の輝度レベルが高いビデオ映像の制作のためのものではない。」 つまり、基準白(標準拡散白)は100nitsのままで、これはSDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)ディスプレイの基準白と全く同じである。 100nitsよりも上はスペクトル・ハイライトだけである。 つまり、ST2084 HDRディスプレイの平均画像レベル(APL)はSDRディスプレイのAPLとさほど変わらないということになる。(下記ヒストグラム参照)

HDR ST2084 Gamma

これを標準Rec709ガンマカーブと比較すれば、その違いは明白である。

Rec709 Gamma
注:ST2084は10,000Nitsのピークルマに基づく「絶対」標準であり、Rec709は設定されたピーク輝度値のない相対標準であるため、ガンマ(EOTF)曲線を直接比較することは実際には非常に困難です。 最も近いのは、以下のように、1000 nit ST2084ディスプレイへのRec709ピーク輝度値の選択と比較することです。

興味深いことに、特にRec709ディスプレイのピーク輝度が上がった時に、Rec709ベースのディスプレイキャリブレーションと比較した場合、「暗い」ST2084ベースのHDRがどのように影になっているかです。 これは、ST2084ベースのHDRの主な問題の1つです。
通常の明るい「リビングルーム」状態での視聴は非常に困難である。

けれどもHDRディスプレイが異なればそのピーク輝度レベルも異なり、ガンマカーブの修正が必要になる。たとえば、ドルビー4000nitパルサー・モニターにはST2084規格の約90%にピークのあるHDRガンマカーブが必要である。
 Dolby HDR Gamma

ST2084 「ゴールデン・リファレンス」ディスプレイの最大値が10,000nitsであるのに対し、ソニーのBVM-X300モニターのピーク値は1,000nitsであるから、ソニーのBVM-X300モニターにはST2084規格の75%にピークのあるガンマカーブが必要である。

 Sony HDR Gamma
次のST2084 HDRガンマカーブは、100 Nitモニターが表示するものを比較して示している。
100 Nit HDR Gamma
上のグラフはすべて0から1の範囲で標準化されています。 より理解しやすい比較のためには、次のようにすべてのカーブを実際の絶対値にマップする必要があります。(これらのグラフは対数ではなく線形であることを忘れないでください。人間の目に見えるような視覚効果は誇張されています)

グラフを変更してLog Scalingを表示すると、出力が人間の目に対して知覚的に正しいので、次のようになる。

このページの下の「HDR白レベル」のグラフでも同じことが分かります。

ST2084 HDR - 本当の意味は?

ST2084 HDRについて最も当惑するのは、それが映像全体の輝度を上げることを目的としているわけではなく(残念ながらHDRについてほとんどの人がそう考えていると思われる)、クロムめっき上の反射や太陽に照らされた雲、炎、爆発、電球のフィラメントなどのスペクトルハイライトの詳細を表示するために、輝度に余裕を持たせることを目的としていることである。

ST2084 EOTF - 映像レベルに関する本当の意味

ST2084仕様から以下に直接引用する。

このEOTF (ST2084)は、より大きなルミナンスレンジを持つビデオ映像を制作できるようにすることを目的としており、ビデオ映像全体の輝度レベルを上げることを目的としているわけではない。 出力輝度の異なる装置間で表示に整合性を持たせるためには、コンテンツの平均画像レベルは現行の輝度レベルに近いものにとどまりそうである。たとえば、ミッドレンジのシーン露出はビデオや映画に適している現行の輝度レベルとなるだろう。

ST2084 HDR規格では基準白(標準拡散白)を100nitsと規定しており、これはSDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)ディスプレイの基準白と全く同じである。 100nitsを超えるのはスペクトルハイライトの詳細部分だけである。 つまり、ST2084 HDRディスプレイの平均画像レベル(APL)はSDRディスプレイのAPLとさほど変わらないということになる。

実際には、ST2084 HDRはSDRディスプレイの現行の明度範囲に単に「追加」を行うということであり、それは現行のディスプレイが映像の細部をクリップ(もしくは少なくともロールオフ)している明るい部分の映像の詳細を見ることができるようになることを意味する。
SDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)映像とそれに相当するST2084 HDR映像との違いを単純化したものを、以下のヒストグラムに示す。
SDR映像とST2084 HDR映像ではAPL(平均画像レベル)はほぼ一致しており、コントラスト範囲とスペクトルハイライトのレベルだけが増大していることがわかる。

 HDR Range
注: ディスプレイはそれが可能な最低黒レベルに設定されており、現在SDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)Rec709規格はすでにこの最低黒レベルを採用しているから、誰が何と言おうとHDR規格は「より暗い黒」を作り出すことはできない。
 

HDR - 黒の現実

以下に示す内容は、ドルビーが所有する「家庭用ドルビー・ビジョン」に関するホワイト・ペーパーからの引用である。

「現行のテレビおよびブルーレイ規格は、最高輝度を100nitsに、最低輝度を0.117nitsに制限している…」

残念ながらこの文章は良くて不正確、悪くてマーケティングの誇大広告である。なぜなら、ブルーレイ・フォーマットは輝度レベルの最大、最低値を制限していないし、これらの値はディスプレイの設定で決めるものだからである。 最低レベル(黒レベル)は通常単にそのディスプレイが出せる最低値であり、OLEDディスプレイの暗さ(例えば0.0001nits)から安価なLCDディスプレイのより高いレベル(0.3nits以上)まである。 最大輝度は、家庭用テレビでは部屋の周辺光を克服するために、かなり高い値に設定されることが多く、家庭用テレビの多くは300nits以上に設定されている。

注: 「最低値(黒レベル)は通常単にそのディスプレイが出せる最低値である」という文章は、OLEDの黒レベルは低すぎることが多く、陰影詳細のクリッピングを避けるためにユーザーは黒レベルを上げることが多いという事実を参照している。

元のブルーレイ素材をグレードするとき、使用するディスプレイは制御されたグレーディング環境(暗い環境)では80~120nits(一般的平均値は100nits)に、またその黒レベルは使用するディスプレイによって0.001~0.03nitsにキャリブレートされる。(けれども、黒レベルの異なるさまざまな家庭用テレビで視聴するときは”心地良い”映像を維持するためにより高い値を使うことが多い。) 上述したように家庭環境でブルーレイを視聴する際、周囲の室内照明レベルを克服するため、テレビの設定をより明るくする必要のあることが多い。




「販促資料」にどう書かれていようが、実際にはHDRは黒レベルとは何の関係もない。

(注: 深い考察をしているわけではない。 相対的な映像黒レベルについて考察している。 HDRの12ビットや10ビットと現行のSDR8ビットとの関係については別問題であり、SDRが12ビットや10ビットになれないという理由はないし、その恩恵を受けられないという理由もない…)

次の画像は、SDR画像とそれに相当するST2084 HDR画像を比較したものである。 言うまでもなく、あなたのディスプレイがピーク輝度を調整できないときは、このシミュレーションは妥協したものになる! けれども、画像の主体となる部分は明るさに整合性があり、拡大ダイナミックレンジによりハイライト部分で詳細を見ることができることがわかる。)

SDR


ST2084 HDR


この画像を「正規化」すると、SDRとHDRの違いをもっと単純に見ることができる。

SDR


ST2084 HDR


 残念なことに、ST2084 HDRのデモンストレーションのほとんどはコントラストレンジを正しく写像していない。その結果、画像全体が明るくなりすぎ、このことは上述したようにST2084 HDRが主に意図したことではない。

もちろん、現実にはHDRで得られる追加のダイナミックレンジを使用して、画像を創造的に再グレードしてその恩恵を受ける。しかし、ハイライトのより詳細な表示がST2084 HDRの本当の姿である。
 

さまざまなディスプレイとST2084 HDR

言うまでもなく、HDRディスプレイが異なればピーク輝度性能も異なる。前記のST2084 EOTFグラフで定義されるように、表示する画像をそのディスプレイに可能なピークnits値にクリップする必要がある。「ピークルマクリップ」は信号内のメタデータによって制御され、グレーディングを行うのに使用するディスプレイのピークルマを定義する。プレゼンテーション・ディスプレイはこのピークルマを使用して「クリップ」レベルを正しく設定する。

このクリップはどのようにして行われるのか – 前記EOTF曲線によるハードクリップか、それともロールオフを伴うソフトクリップか - まだ定義されていない。
ディスプレイが2つあれば、それぞれのピークルマクリッピングの方法は同じではないので、たとえ両方のピークnits性能が全く同じだったとしても、2つのディスプレイが同じ方法で同じ画像を表示することはありそうもないというのが現実である。
 

ピーク輝度とビットレベル

ST2084規格は絶対規格であり相対規格ではない。したがって輝度レベルはそれに相当するビットレベルを持つ。 10ビット信号に関するレベルを次に示す。



•10,000 nits = 1023
•5,000 nits = 948
•4,000 nits = 924
•2,000 nits = 847
•1,000 nits = 769
•400 nits = 668
•100 nits = 519
 
もう一つのHLG規格は相対規格であり、常にフルビットレベルを使用する。
 

BBC/NHK  HLG HDR

LightSpaceでは、BBC HLG HDR規格をRec709、P3、Rec2020色域のプリセットとして用意している。

ST2084とは異なり、BBC HLG HDR規格は規定の最大輝度値を持つリファレンス・ディスプレイに基づいているわけではない。その代わりに規格ではディスプレイの周辺照明とそのディスプレイの実際のピークルマ値に基づいてEOTFガンマカーブを変更する。 BBC HLG 規格のガンマカーブ(EOTF-電気光学伝達関数)を次に示す。ここでも、画像の大部分で輝度が比較的低く保たれており、画像DRのほんの少しの部分に拡大輝度性能が適用されていることがわかる。
(これは相対ディスプレイ・ガンマ・グラフであり、異なった画像ソースから異なったディスプレイへの変換を示すものではない!)

BBC HLG規格ではnitsで表される規定のリファレンス・ホワイトポイントを使用するのではなく、ピーク輝度の0.5(50%)にホワイトポイントを置く。

 

BBC HLG規格は約5,000nitsまでのディスプレイのための規格であり、これはST2084規格の10,000nitsよりも低い。けれども、HDRディスプレイが実際に出せるピーク輝度レベルは十分すぎるというのが現実である。
上のHLG曲線は5000nitsディスプレイに該当し、下の曲線は1000nitsディスプレイに該当する。

上記すべてのBBC HLG曲線は10nitsの暗い「周辺」照明に基づいている。

この「周辺」の値が重要である。なぜなら、次の1000Nitディスプレイのための曲線に示すように、BBC HLG規格はEOTFを計算するのにディスプレイのピークルマ値を使用することに加え、ディスプレイの周辺照明を使用してシステムガンマを修正するからである。


 

 さまざまなディスプレイとHLG

HLGフォーマットはメタデータに依存しないため、ディスプレイが異なっても画像の整合性が非常に高くなっている。
さらに、システムガンマを変更するためにディスプレイの周辺照明を使用することで、ディスプレイ・キャリブレーションを調整して視聴環境の違いに対処しようと試みている。 視聴環境が異なっても「視聴の整合性」を提供するための初めての現実的な試みである。
これは、ST2084ベースのHDRが取り組む課題である。下記「視聴環境に関する考察」参照。
 

HDR - その現実と付随する問題

HDRディスプレイの最も大きな問題は、実際に見ることが苦痛になりかねないということである。これは余計な目の疲れによるものだと言われることが多い。
問題は人間の目との違いである。人間の目は巨大なダイナミックレンジを持っており、そのダイナミック・コントラスト比は約1,000,000:1であり、約24ストップである。 この動的適応により、私たちは暗い環境でも明るい太陽光の下でも詳細を見ることができる。

しかし、人間の視覚系が一時に機能できるのはこの巨大なダイナミックレンジのほんの一部でしかない。 人間の視覚系が完全な適応状態にあるときにこの静的ダイナミックレンジが起こり、「通常」の視聴距離で家庭用テレビを観ているときや演劇などを観ているときにこの静的ダイナミックレンジがアクティブとなる。 人間の目の静的ダイナミックレンジに関する正確な数値はほとんどない一方で、平均視聴環境ではそれは約10,000:1であり、約12ストップであると多くの人が同意している。



 

さらに人間の視覚系適応反応も考慮に入れる必要がある。つまり、暗いシーンから明るいシーンへ、またその逆への適応にかかる時間である。明るいシーンから暗いシーンへの移行では通常適応に何十分もかかるが、暗いシーンから明るいシーンへの移行では適応がかなり早く、それでも何十秒もかかることが多い。

このことは、暗い部屋の中から窓の外を見た後、目を窓から部屋の中へとパンすることで簡単に経験できる。 目が明るさの違いに適応するにつれ、部屋の詳細がゆっくりと解像されていく。

比較的小さなテレビを標準的な視聴距離(3mくらい)で見るときは、テレビのスクリーン全体が高視力である人間の視界の中心角(5°~ 15°)内にある。このことは人間の視覚系が明るさの違う部分に個別に反応できず、フルに順応したままになり、視聴者は人間の目の静的ダイナミックレンジだけを使用していることを意味する。

HDRのコンセプトから実際に恩恵を受けるためには、ディスプレイに必要な実際の視野角は45°台である。これは、平均的な55インチテレビをスクリーンからちょうど65インチ離れた場所に座って見る状態に相当する。
(「解像」のセクションも参照。)

 
本当にこんなに近くに座ってテレビを観ますか?

これが本当に意味するのは、過剰なHDRを備えたディスプレイは通常の視聴距離で目の疲れを引き起こす可能性があり、見ることが苦痛になる可能性が高いということである。
 

HDR - 間違った前提?

よく使われるHDRを表現する方法に、次のような図を使用する方法がある。この図は、現実の世界の大きなダイナミックレンジがどのようにしてSDR TV(スタンダード・ダイナミックレンジTV)の限られたダイナミックレンジへと低減されるのか、HDRはどのようにして元のシーンのレンジをより維持するのかについて示している。

 

上の図はAMDのプレゼンテーションが元になっていると思われるが、インターネットで広まっており、SDRに対するHDRの想定される利点を示すのに使用されている。しかし、この図には多くのエラーと間違った想定が含まれている。

• これまでに明らかにしたように、人間の目は約10,000:1を超えるダイナミックレンジを同時に「見る」ことはできない。
• したがって図の左側を「人間のダイナミックレンジ」とする説明は間違っている。(「元のシーンのダイナミックレンジ」と説明しなければならない。)
• SDRとHDRの関係とディスプレイの黒レベルとの間には何の関係もない。黒は常にそのディスプレイが表現できる最も黒い黒だからである。
(黒レベル全体を「リフト」する、HDR画像の中の明度の高い部分の影響を無視すれば、SDRやHDRに使用するディスプレイ技術が同じなら、それは全く同じ黒レベルを作り出す。)
• したがって上の図は誤りで、リフトされた黒を間違って示している。
• また、SDRが最低0.05nits、HDRが最低0.0005nitsというのも誤りである。
• HDRディスプレイで10,000nits出せるものはない。
• 家庭用テレビのほとんどはすでに100nitsを優に超えており、通常250~400nitsである。

ディスプレイを修正するなら、黒に0.0005nitsを、HDRに1000nitsを引用したとしても次のような図になる。下の図からもわかるように、このような高いピーク白を持つディスプレイは非常に高い黒レベルを持つことから、現在のディスプレイ技術ではこのようなことは実現不可能である。


 

HDR - 黒レベル

ディスプレイはそれが可能な最低黒レベルに設定されており、現在SDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)Rec709規格はすでにこの最低黒レベルを使用しているから、誰が何と言おうと「HDR規格は”より暗い黒”を作り出すことはできない」ということを繰り返しておく。

現実の世界では、過剰性能のHDRディスプレイのピーク輝度は650~1000nitsだろう。 (視聴環境が暗ければ暗いほど、目が疲れるまでのピーク値は低くなる。このことはHDRのもう一つの課題である。下記「視聴環境に関する考察」参照。)

ウルトラHDアライアンスはこのことを知っていると見え、実際現行のHDRディスプレイに関して2つの異なった仕様を規定している。

• 0.05 nits ≥ 1000 nits
• 0.0005 nits ≥ 540 nits

高いピークルマを持つディスプレイは高いブラックポイントを持ち、低いブラックポイントを持つディスプレイは非常に低いピーク白を持つことから(LCDとOLEDのように)、この二重仕様が存在する。
 

HDR - 白レベル

人間の目は光レベルの変化に対数応答することから、現在の100nits のSDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)Rec709「規格」が実際にはピークHDR10,000nitsレベルの約50%であることは、指摘するに値する。

(注: 「規格」と鍵カッコでくくったのは、Rec709が相対規格であり、環境照明による影響を克服するためピークルマレベルを調整することが可能であるからである。これに対しHDR ST2084はnitsベースの絶対規格であり、調整することはできない。)

次の図はこのことをさまざまなピーク白レベルと比較して示している。


 

明るさの限界

HDRに関してもう一つ見落としがちな課題は、ディスプレイの所要電力を制限する必要があることである。なぜなら、言うまでもなく極度の明るさは過度の電力消費を生むからである。 それは、電力費、環境問題の可能性両方の懸念をはらんでいる。 願わくは、双方の問題ともより効率の良いディスプレイ・バックライト技術で克服してもらいたいものである。

しかし、大きな所要電力を抑えるために、HDRディスプレイはすべて、どのような形にせよABL(自動輝度制限 - HDR用語で電力制限)を採用している。 簡単に言えば、ABLは所定の輝度レベルを超えたスクリーンの割合によってスクリーンへの電力を低減するもので、これによりシーン全体の輝度が低下する。 ST2084/86仕様はMaxCLL(最大コンテンツ光レベル)およびMaxFALL(最大フレーム平均光レベル)を定義するが、これらはHDRマスタリング・メタデータの一部であり、ディスプレイは映像をどのように表示するかをこれらを基に計算し、それによって所要電力を制限する。

言うまでもなく、これによって同じシーンのショットが異なり、フレーミングが異なり、同じ映像がディスプレイによって異なって見える。また、平均画像輝度レベルがショット・フレーミングによって異なるため同じディスプレイでも異なって見え、そのディスプレイが知覚的にほとんどランダムに異なった電力制限を行う可能性がある。

このような変動は、正確なディスプレイ・キャリブレーションや映像の再生に深刻な問題を引き起こす。
 

視聴環境に関する考察

HDRベースのST2084で、家庭内視聴において見落とされがちな問題の一つに次のようなものがある。それは、ディスプレイの多様な輝度(バックライトやコントラスト)制御がHDR TVではすでに限界に達しているため、室内の周辺光レベルを克服するためにディスプレイの光出力を増大させる方法はないということである。これは家庭用SDR TVでは頻繁に行われ、昼と夜の視聴に合わせて設定を変えることが可能である。

ST2084規格の目的は大きなスペクトルハイライトレンジで映像制作を可能にすることであり、映像全体の輝度レベルを上げることではないので、このことが UHDTV/HDRの課題となっている。

これまで述べてきたように、このことはほとんどのシーンでHDR素材の平均画像レベル(APL)が正規のSDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)映像のそれと一致することを意味する。 その結果、室内の周辺光レベルが比較的高い、理想的とは言えない視聴環境では、HDR映像の大半は非常に暗く見え、目の瞳孔が縮小して陰影詳細を識別することができなくなるため、陰影詳細が非常に見えにくくなる。

HDR映像を見るためには、周辺の光レベルを注意深くコントロールしなければならない。 SDR視聴時よりもはるかに注意深く。
 

CG - 広色域

UHDTV規格を発展させたものとして、HDRにWCGを組み合わせ、現行のHDTV規格から大きく差別化したものがある。ここではRec2020色域を目標色空間としている。

問題は、Rec2020を達成できるディスプレイが市場にはない(現実には)ということである。つまり、UHDTVディスプレイごとに、そのディスプレイの実際の色域性能に基づいて表示する映像の色域を「調整」しなければならないということである。 この調整は、ソース映像の色域を定義する、UHDTV信号内に埋め込まれたメタデータ(前述したようにHDRメタデータと関連している)を使用して行われ、そのディスプレイが可能な色域に「知的」に再写像することを目標としている。

ここで再び問題になるのは、HDRメタデータとピークルマ・クリッピングと同様に、色域再写像技術についての提案が全くないということである。 その結果、ディスプレイごとに必要な色域再写像をそれぞれの方法で行うことになり、最終映像が異なったものとなる。

 

上の図は、広色域をそれより色域の小さなディスプレイに表示しようとするときの問題を示している。 この場合、ディスプレイはDCI-P3と類似しているが同じではない色域を持っている。DCI-P3はUHDTVディスプレイのための最も小さな色域用に決められた「プリファレンス」(内部の小さな色域三角形)であり、これに対し、大きな色域三角形はRec2020を表す。

ディスプレイは、それが持つ色域という制約の中で、Rec2020にキャリブレートされる。それを丸印のプロット(ターゲットの丸印に一致する十字は測定値)で表す。 しかし、Rec2020内でかつディスプレイが持つ色域の外側の彩度の落ちた部分は正確に表示されない色を示すし、この部分の色は実際にはそのディスプレイの色域の角に引き戻される。

言うまでもなく、ディスプレイの実際の色域性能が大きければ大きいほど、クリッピングは少なくなり、色域性能の違いは見えにくくなる。特にこれは、現実の世界ではRec2020色域の角に近い色はほとんどないことによる。

色域のクリッピングを低減するために、色域の再写像を行って色域内から色域外へのクロスオーバーを「和らげる」ことができる。

 

上図では、新規のより小さな内部の三角形とディスプレイの実際の色域三角形との間の部分が、映像の色の詳細をより保つために色の正確性を犠牲にしてディスプレイ・キャリブレーションが「ロールオフ」される部分を示している。ここでは、彩度の落ちた部分にあるすべての色が、ディスプレイの最大色域と内部三角形の縮小色域との間のより小さな部分に効率的に圧縮される。

人間の知覚は色によって異なった反応を示すため、再写像ではこのことを考慮に入れる必要がある。実際には、色域写像ははるかに複雑になる。
問題は、UHDTV仕様が使うべき色域再写像について規定していないことである。

このことから、現実の世界ではウルトラHDディスプレイが2つあれば同じ映像を表示しても同じに見えることはないということがわかる。
さらにウルトラHD仕様では、Rec2020を目標の色空間(枠)としている一方で、実際にはウルトラHDディスプレイがDCI-P3の90%さえ達成していればUHDTVディスプレイとして認めている。DCI-P3の90%はRec709よりもさほど大きな色域ではない。

 

上記CIEuv図(CIEuvはCIExyよりも知覚的に均一であるため使用されている)は、100% DCI-P3 とRec709、それにRec2020の色域の違いを示している。
図からもわかるように、DCI-P3の90%はRec709よりもさほど大きなわけではない。
 

色覚

最後に、ホームシネマファンのために色覚に関する問題について考察する。

映画館で、DCI-P3映像を含む、DCI-XYZ色空間枠のデジタル映写の新しい映画を観るとする。

次に、ブルーレイの同じ映画を購入し、Rec709/BT1886でキャリブレートされたホームシネマ環境でその映画を観るとする。

ブルーレイのマスター映像が正しく制作されていると仮定して、映像色の忠実性の欠如に気づくだろうか?

実際には、自然界にRec709/BT1886色域の外に存在する色はほとんどない。 Rec709/BT1886色域の外に存在する色は、ネオンサインなどの人工色が多い。
 

UHD解像度

UHDのもう一つの要素は4K(3840x2160)への解像度の増加である。

一見したところ、解像度の増加はUHDの真の利点のように思われる。が、それは実際に喜ばしいことなのだろうか?
 

解像度 vs. 視聴距離

解像度が高ければ高いほど、スクリーンからの視聴距離は短くなる必要がある。

逆に、視聴距離が長くなればなるほど、映像の解像度(質)に対して実際のディスプレイの解像度は低くなる。

これが意味することを簡単に言えば、「大きな」55インチ4K UHDスクリーンを見るとき、55インチHD解像度スクリーンの恩恵を受けるとするなら、視聴者はスクリーンから4フィート(約1m22cm)より離れた場所に座ってはいけないことになる。



このことを、スクリーンサイズと解像度 vs. 視聴距離 を表すチャートに示す。

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